2023年10月21日土曜日

三島由紀夫『橋づくし』








<ウィキペディア「あらすじ」より>

陰暦8月15日の夜、新橋の料亭「米井」の娘・満佐子は、芸妓の小弓、かな子と一緒に願掛けに出かける。それは、満月の深夜、無言で後戻りすることなく、7つの橋を渡って祈ると願いが叶うというものだった。満佐子の願いは、「俳優のRと一緒になりたい」。満佐子と同い歳の22歳の芸妓・かな子の願いは、「好い旦那が欲しい」。42歳の小太りの芸妓・小弓は、「お金が欲しい」のである。この3人と、満佐子の家の新米女中の田舎娘・みなが、お供として願掛けに加わった。願掛け参りのルールは、「7つの橋を渡るときに同じ道を二度通ってはいけない」、「今夜の願事(ねぎごと)はお互いに言ってはならない」、「家を出てから、7つの橋を渡りきるまで、絶対に口をきいてはいけない」、「一度知り合いから話しかけられたら、願(がん)はすでに破られる」、「橋を渡る前と渡ったあと、それぞれ合計14回、手を合わせてお祈りをする」などである。4人は願掛けの橋に向かって歩きだした。月が出ており、街は寝静まり、4人の下駄の音が響いている。最初に渡る橋は向う岸に区役所のビルが見える三吉橋である。この橋は三叉の橋で、2つの橋を渡ったことになる。満佐子は手を合わせて祈っている時、ふと女中のみなを見ると殊勝に何かを祈念していた。自分と比べて、どうせろくな望みを抱いていないのだろうと満佐子は思ったりした。第3の橋は築地橋である。ここを渡る時、はじめて汐の匂いに似たものが嗅がれ、生命保険会社の赤いネオンが海の予告の標識のように見えた。芸妓のかな子は出る前から少しあった腹痛が激しくなってきた。何かに中ったらしい。次の橋を目前にして、かな子は脱落してしまった。第4の橋は入舟橋で、残りの3人は無事に渡った。第5の橋まで大分道のりがあり、左方の川むこうに聖路加病院の頂きの巨きな金の十字架が見えた。第5の橋は暁橋である。毒々しいほど白い柱の橋だった。もうすぐ渡り切ろうというところで、銭湯帰りの浴衣の女が小弓に気さくに声をかけた。小弓は脱落した。いくら返事を渋ってみたところで、「一度知り合いから話しかけられたら、願(がん)はすでに破られる」のであった。第6の橋は堺橋である。緑に塗った鉄板を張っただけの小さな橋であった。駆けるように渡ると、まばらな雨粒が降ってきた。満佐子はみなと2人だけになり、この見当のつかない願い事を抱いた岩乗な山出し娘の存在が不気味になってきた。第7の橋は備前橋である。川向うの左側は築地本願寺である。橋の前で祈念している時、満佐子はパトロールの警官に不審尋問されてしまった。満佐子は代わりにみなに答えさせようと、そのワンピースの裾を引っ張ったが、みなも頑なに黙っている。満佐子は先に駆け出して逃げようとしたが警官に腕をつかまれ、思わず、痛いと声を発してしまった。橋の先を見ると、一緒に駆け出したみなが14回目の最終の祈念を黙々とこなしていた。家に帰った満佐子は泣きながら母親に、みなの気の利かなさを訴えた。一体おまえは何を願ったのかとみなに聞いても、みなはにやにや笑うだけであった。数日後、いいことがあった満佐子が機嫌を直して、再び、みなに同じことを訊ねたが、みなは不得要領に薄笑いをうかべるだけであった。


 

2 件のコメント:

  1. 言葉が盛られた。願いはかなう。

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  2. すばらしい。素敵だ‼!
    Glamorous show time まで設けてくれた

    That’s I wanna be

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