2012年10月1日月曜日

ナントいゝ月夜ぢやアねへか


日本都市の外観と社会の風俗人情は遠からずして全く変ずべし。痛ましくも米国化すべし。浅間しくも独逸化すべし。然れども日本の気候と天象と草木とは黒潮の流れにひたされたる火山質の島嶼の存するかぎり、永遠に初夏晩秋の夕陽は猩々緋の如く赤かるべし。永遠に中秋月夜の山水は藍の如く青かるべし。椿と紅梅の花に降る春の雪はまた永遠に友禅模様の染色の如く絢爛たるべし。婦女の頭髪は焼鏝をもて殊更に縮さざる限り、永遠に水櫛の鬢の美しさを誇るに適すべし。
    永井荷風『江戸芸術論』(大正2年)より抜粋


灯火のつきはじめるころ、銀座尾張町の四辻で電車を降ると、夕方の澄みわたつた空は、真直な広い道路に遮られるものがないので、時々まんまるな月が見渡す建物の上に、少し黄ばんだ色をして、大きく浮んでゐるのを見ることがある。
時間と季節とによつて、月は低く三越の建物の横手に見えることもある。或はずつと高く歌舞伎座の上、或は猶高く、東京劇場の塔の上にかゝつてゐることもある。
  永井荷風『町中の月』より抜粋


写真(上)は、本日(10月1日)午前5時15分頃の撮影です。デジタルズーム1800mm相当F5.9で露出800分の1秒でした。台風の雨は何時頃まで降っていたのか分かりませんが、もう道路はすっかり乾いていました。
写真(下)は、午後8時頃に撮りました。


3 件のコメント:

  1. 昨日の朝はちょうど同じ時刻に空を眺めていたようです。石原都知事のよく使う言葉を借りれば、センチメントが秋には似合う。同じでないのは、オイラが月をきちっとカメラに収めてないことかな。 月の裏側を見られる事はないそうですが、こうしてみると月は我々に対して回転しているように模様は語っているけど、どうなのでしょうか。

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  2. 月だけでなく惑星の衛星のほとんどが”自転周期が公転周期と同じ”なので、いつも同じ面を向けていることになっているそうです。
    満月を過ぎると「下弦の月」になりますが、西に沈むときには見かけ上「上弦の月」になってしまいます。月が回転してくれていればずっと上弦のまま見えるかもしれませんね(^^)

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  3. 中秋の名月、ここで愛でる事が出来るとは思いませんでした。有難う。
    荷風らしい嘆き。彼の粋感は、私も大きく同感するところのなのですが、一点、妾を囲って家の一軒でも持たせないと男に非ずな部分は、先生無理ですと言いたい。それにしたくない。こればかりは時代もあるし、囲うなら女王様がいいなと(^^;彼なら変態趣味は人に非ずってやるだろうか(・・)

    1800mmf5.91/800secデーターありがとうございました( ..)φ驚異的なASA感度だろうなぁ。若い頃には想像できないような数字と思います。そう言えばASA1600の大増感でモノクロを撮るのが高校時代流行りました。なんだっけ、もうフィルムの名前も忘れちゃったな(爆)なんとかクローム。。。トライなんとか(^^;

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